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みなさまにもなじみの深い作者の自筆短冊をご紹介します。


ふるさとの小川に遊ふわらへらの いなか言葉もなつかしみきく 寸心 No.003457 売約済み
西田 幾多郎 ( にしだ きたろう )

ふるさとの小川に遊ふわらへらの いなか言葉もなつかしみきく 寸心

 小川ではしゃぐ子供たちのように、短冊からはみ出しそうな伸び伸びとした筆が印象的な作品です。
 西田幾多郎は石川県に生まれた哲学者で、幼い頃から勉学に励み、東京帝国大学卒業後は地元の中学・高校で教鞭をとりながら哲学の研究を深めました。当時教えていた母校の学生からは「デンケン先生」(デンケンはドイツ語で「考える」の意)と呼ばれました。40歳のときに京都帝国大学で教えるようになってからは独自の哲学を追求し、初期の頃の研究をまとめた『善の研究』は当時の旧制高等学校の生徒の必読書となります。京都にある琵琶湖疏水沿いの「哲学の道」は、西田が思索に耽りながら辺りを散策していたことから名付けられた道と言われています。京都帝国大学を退官するまでの約20年間は特に精力的に研究を行い、京都学派の創始者として後世に大きな影響を与えました。
 生まれ育った家へと急ぐ道で、いつものように思索に没頭していたのでしょうか。ふと聞こえてきた子供たちの地元言葉に、しばし時を忘れる西田幾多郎の温かい気持ちが表れているようです。京都帝国大学の教え子である久松真一が、たとうに「西田幾多郎先生真蹟短冊」と記しているのも珍しい作品です。
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わかの浦 玉津島芦わけ船の櫓の音たえて たかき燈籠に灯一つ見ゆ 宏 No.003456 売約済み
下村 海南 ( しもむら かいなん )

わかの浦 玉津島芦わけ船の櫓の音たえて たかき燈籠に灯一つ見ゆ 宏

 和歌山県の著名な景勝地、和歌浦を詠んだ歌です。万葉集にも「若の浦に潮満ち来れば 潟を無み 葦辺をさして 鶴鳴き渡る」(山部赤人)と詠まれているくらい、古くから知られた名勝でした。
 作者の下村海南(下村宏)は和歌山県出身で、逓信省官僚を務めたあと、台湾総督府総務長官・朝日新聞社副社長・貴族院議員・NHK会長・内閣情報局総裁などを歴任し、通信事業に大きな影響力を持ちました。ポツダム宣言の受諾に尽力し、終戦の日、玉音放送のさいに、天皇のことばの前後に趣旨説明を行ったことでも知られます。
 一方で歌人としても活躍しました。「玉津島」は、和歌浦のなかでも、特に信仰の対象とされている玉津島神社のこと。現在は陸続きとなっている玉津島ですが、古代には潮の満ち引きで陸と続いたり離れたりする風光明媚な場所であったそうです。いまは海からすこし離れた静かなところで、歌にある「船の櫓の音たえて」はそのことを指しているのでしょう。
 神社には、紀州徳川家の祖である徳川頼宣が寄進した灯籠があり、歌に出てくるのは、その灯籠かもしれません。
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思文閣出版から2006年9月下旬に『増補 蓮月尼全集』(村上素道 編 初版1980年)が復刊されました。 詳細はこちら>>
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