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文士の筆跡(2)

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みなさまにもなじみの深い作者の自筆短冊をご紹介します。


菊花盛関 渕明籬下酔情与菊花親 吾性不□酒近前花惑嗔 孟緯 No.002797 売約済み
梁川 星巌 ( やながわ せいがん )

菊花盛関 渕明籬下酔情与菊花親 吾性不□酒近前花惑嗔 孟緯

 江戸時代末期を生きた梁川星巌は、尊王憂国の漢詩人として知られます。彼は、頼山陽や藤田東湖の影響を強く受け、梅田雲浜、頼三樹三郎、吉田松陰、橋本左内といった尊攘の志士たちと深く関わりました。そのために安政の大獄で捕縛対象とされていましたが、捕縛の数日前、コレラに感染し、亡くなっています。星巌が詩人であったことから、この死は「死に上手(詩に上手)」とも評されました。
 この漢詩では、星巌は菊の花の美しさを歌い上げています。故事やみずからの感情に題材を採ることが多かった星巌にとって、この漢詩はやや異色とも言えるでしょう。このような作風は、星巌の妻で、やはり優れた漢詩人であった梁川紅蘭に近いとも言えます。妻の才能に敬意を抱いていた星巌の姿がうかがえます。
 梁川星巌は名を「孟緯」と言い、この短冊にもその署名がされています。
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日本の空より月の出るそと つはもの共のふりかへるらむ 放庵 No.002796
小杉 放庵 ( こすぎ ほうあん )

日本の空より月の出るそと つはもの共のふりかへるらむ 放庵

 戦時中に詠われたものでしょうか、「日本」「つはもの」の二語が目を惹きます。しかし、月が出て「つはもの」どもが振り向く、という状況は、どこかのどかで、ユーモラスですらあります。
 この歌を詠んだのは、昭和期の日本画家、小杉放庵です。放庵は洋画家としてキャリアをスタートさせましたが、渡欧を機に徐々に日本画に傾倒、洋画と日本画の融合に奔走します。この時期の代表作に、現在も東京大学安田講堂を飾る大作の壁画「採果」「湧泉」があります。この壁画は、昭和史上名高い、東大紛争の安田講堂攻防戦で甚大な被害を受けましたが、現在は修復され、ふたたび日の目を見るに至っています。放庵はその後、東洋画「放庵紙」という独特な紙を用いた、優れた墨絵を多く遺しました。卓越した筆力ながらとぼけた味わいすら感じさせる、滋味深い放庵の絵の魅力は、この短歌にも充分に感じられるのではないでしょうか。
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思文閣出版から2006年9月下旬に『増補 蓮月尼全集』(村上素道 編 初版1980年)が復刊されました。 詳細はこちら>>
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